他人との理解不可能性、その世界で足掻き続ける
1. 伝えたくて伝わらなくて
小さい頃から不思議だった。
なぜこんなにも伝わらないのだろう?
「屁理屈大魔王」などと呼ばれた小学生時代。
他人との間に横たわる絶対的な溝に囚われていた。
Aと言えばBと伝わり、Bと言えばCと伝わる。
性格は明るい方ではあったし友達も多い方だった。
しかし家族でもどれだけ仲の良い友人でも、その間のどこかに
絶対的な「伝わらなさ」が横たわっていることをいつも感じていた。
私が伝えたいことは相手に伝わっているのだろうか?
相手の伝えたいことは私に伝わっているのだろうか?
答えの出ない問いに囚われ、他人とのコミュニケーションを自ら断とうとしたこともあった。
2. 何かを伝えるということ
他者に何かを伝える。そこに在る前提。
どれだけ言葉を尽くしても、「伝わったか」は伝えた当人には絶対に分からないということである。
イメージを言葉にし、言葉を投げかけ、受け取った言葉からイメージを再構築する。
それが同じものなのかを確認する術を我々は有していない。
相手が言葉やリアクションで「伝わった」ことを示したとしてもそれは同じことだ。
「伝わった」という保証などどこにもない。
我々にできるのは「伝えようとすること」だけである。
それだけが「他人に何かを伝える」ということ。
3. 「できない」と「やらない」は違う
だからといってそれが「伝えない」理由にはならない。
どうせ伝わらないなら、共通認識のレールにしがむつくのも良いかもしれない。
そう思ったこともあったが、私にはその能力も無かったようだ。
それすらも挫折した。
しがみつくことはできなかったが、その暗闇の中で掴んだものはあった。それは
伝わるかどうかは分からないけど伝える。伝えたい。
ということだ。
「伝わるから伝える」でも「伝わらないから伝えない」でもなく
「伝えたいから伝える」ということ。
私が「伝えたい」と思ったことは確かなのだ。
ならばそれを信じて伝え続けよう。
そう心に決め、立ち止まっていた足をゆっくりと前に進めた。
4.歩みを進める中で
どうにかこうにか社会人として少しづつ周りと関係性を作れるようになっていった。
正直、社会人一年目は大変だった。
私という人間のパーソナリティの異質さが招いた要素もあれば、
環境に起因する要素もあった。
しかし私の中にある「伝わるかどうかは分からないけど伝えたい」という想いが
ゆっくりではあったが確実に歩みを進めてくれた。
そして、いつしか自分にとって「仲間」と呼べる人たちに囲まれていた。
本当にありがたいことだ。
と、同時に気付いてしまった。
「今の地点がどれだけ心地良くても、ここにはずっとはいられない。変わらなければならない」と。
5. 約束された帰結
それはなぜなのか。
そもそも今の私がいる地点に辿り着けたのは私があの時「変わろうとした」からである。そして今私の周りにいてくれる仲間達も常に「変わろうとしている人達」である。そうであるならばその地点にすがりつくために変わろうとしないということは根っこの部分では、もうその仲間達と繋がっていないことを意味する。
いや、もっと本質を述べよう。
その仲間達と繋がっている、繋がっていない、そんなことは私にとって結果論でしかない。
そもそもその仲間達と繋がっているか繋がっていないのか、そんなことは畢竟分からない。
私が繋がっていたと思おうが、繋がっていないと思おうが、真実は人間には分からないのだ。
あぁ、また約束された帰結に戻ってきてしまった。
6. kobayashiftとは
じゃあもういいんじゃないのか。
真実が分からないのであれば同じではないか。
この地点が心地良いのであればわざわざ自分からここを捨てる理由がどこにあるのか。
自分の中にそんな考えがよぎった。
しかし、私にとってはそんなことはもはやどちらでも良かった。
根っこの部分、「魂で繋がっていると自分が信じられる」かどうか、問題はそれだけだったのだ。
自分が変わる、変わろうとし続ける限り絶対にそれは信じられる。
だから私は変わり続けるのだ。
それがkobayashiftの「shift」即ち「変化、変更」に込められた想い、いや、信念である。
7. AIによって
これからの時代、AIによってこの世界は塗り潰されていく。
あなたが大事に思っているモノ、私が大事に思っているモノ、それらも全てAIに塗り潰されていく。
例外は無い。
これは確定している事実である。
AIの拡張は人間の価値体系そのものを塗り替える。
それによって我々が現在抱いている欲望や他者に対する認識すら根本的に変容させられる。
8. Z +AIという思想
驚異的なスピードでAIに塗り潰されていくこの世界で、
私がずっと直面し続けている「何かを伝える」という問題の意味すら、
AIによって塗り替えられていく。
それでも私は伝え続ける。
どれだけ世界が変わろうとも、あの日の願いを信じて。
他者との理解不可能性の世界で、それでも私は他者との+(接続)を試み続ける。
私が信じたもの、それらが全て塗り潰されることが確定していたとしても、
私はそれらと+(接続)を試み続ける。
この世界がAIで塗り潰されるその時が来たとしても、
私にとっての他者は失われることはない。
他者は私(Z)の中にいる。